猫に長生きしてもらうための健康管理はできていますか?
猫の長生きの秘訣は健康的な食生活にあります。
「少し太っているくらいがかわいい」なんて思って、好き放題ごはんやおやつを与えている飼い主さん。
せっかく出会えた愛猫には、1日でも長く健康で生きてもらいたいものですよね。
迎え入れた猫に健康で長生きしてもらうためには、与えるご飯について少しの知識があると大きく変わります。
この記事では、猫に長生きしてもらうためのご飯について知ることができます。
猫の長生きに大切なご飯

長生きするためには、さまざまな病気の原因となる肥満を予防することが大事であり、肥満を予防するポイントは日々のご飯です。
食べた物は、からだを作りエネルギー源になります。その食べる物自体や食べる量に問題があれば、健康に影響してしまいます。
では猫にとって良い栄養バランスとは何なのか?
確認していきましょう。
猫は肉食動物
もともと猫は完全肉食動物です。
ノラ猫が残飯を食べていたり、飼い猫でも人間の食べ物を口にするこもいるため「雑食」と思いがちですが、猫は完全な「肉食動物」です。
雑食動物と肉食動物の違いは、エネルギー源の違いにあります。
雑食動物は炭水化物や脂質をエネルギー源としていますが、肉食動物のエネルギー源はタンパク質になります。
そのため肉食動物である猫は、多くのタンパク質が必要となります。猫・犬・ヒトの栄養素比較は表1参照。
では、炭水化物は全く摂らずにタンパク質のみの食事でいいかというと、そのようにはいきません。
炭水化物を全く摂らないとなると、タンパク質が多すぎる食事となります。
タンパク質は代謝過程で腎臓や肝臓に負担がかかってしまうため、摂り過ぎもよくないのです。
肉食動物である猫でも、ある程度の量の炭水化物も消化することができるとわかっています。
タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 | |
猫 | 35% | 20% | 45% |
犬 | 25% | 15% | 60% |
ヒト | 18% | 14% | 68% |
猫にとって栄養バランスの整ったご飯とは
では、そんな肉食動物の猫の食事にはどのようなものを選ぶべきなのか。
猫が必要な栄養素の量は成長段階や行動量、健康状態によっても違いがあります。
子猫 (~12ヶ月) | 成猫 (1~7歳) | シニア猫 (7歳以降) | |
タンパク質 | 35~50% | 30~45% | 30~45% |
脂質 | 18~35% | 10~30% | 18~25% |
炭水化物 | 35%以内 | 35%以内 | 35%以内 |
猫の健康を維持するためには、バランス良く栄養素を摂ることが大切になります。
そこで安心して与えることができるのが「総合栄養食のキャットフード」です。
キャットフードにはバランスの取れた主食となる「総合栄養食」、特定の栄養素を補う目的の「一般食」、病気等の時の「療法食」があります。必要な栄養素をバランス良く配合されているのが総合栄養食です。
この「総合栄養食」を適正量与えることで栄養素のバランスがとれていることになります。
昔は白米に鰹節をふりかけた「ねこまんま」を食べている猫もいましたが、完全にタンパク質不足で炭水化物の過剰摂取となります。
手作りフードは添加物や保存料等の心配は不要ですが、ペット栄養学の知識がないと栄養バランスの取れた食事は難しいものです。
猫が長生きするためのキャットフードを選ぶポイント

総合栄養食のキャットフードを選ぶポイントは
- 栄養バランス
- 猫の好み
- 信頼できるメーカー
から選びましょう。
猫にあった栄養バランス
プレミアムフードに限らず、どのようなフードでもタンパク質や脂質をはじめとした栄養成分割合が表示されています。
この栄養素が猫に必要な適正範囲内か確認しましょう。
タンパク質
健康な成猫の場合は最低30%以上必要。
過剰摂取のデメリットもあるため割合が高すぎるものにも注意。
脂質
多くなると肥満のリスクが高まりますが、嗜好性は上がります。
健康な成猫であれば低脂質のフードを与える必要はありません。
カロリー
カロリーが高すぎるフードは肥満につながります。
一般的なフードは360kcal/100gです。大きく上まったり下まっていないものを選びましょう。
猫の好みに合わせる
猫にも好みがあるため、猫の好むフードを与えましょう。
せっかく良質なフードであっても必要量を食べてくれないと、栄養バランスが不十分になることになります。
キャットフードに使われる原材料の肉や魚はさまざまなものが使われています。
原材料の違いによって、香りや味が異なり猫の食いつきも変わります。
迎え入れた猫の好みの香りや味を把握し、できる限り好みのフードを与えましょう。
そして、できることなら小さい頃からいろいろな種類のフードを与えてみてください。
気に入ったフードがあり「よく食べてくれるから」と特定のフードのみを与えると、偏食家になり、特定のフード以外を受け入れなくなります。
特定のフードしか食べなくなると、将来療法食が必要な時や災害時など避難が必要な時に食べられるものがなく、困ってしまいます。
ぜひ、猫に合った栄養バランスと好みのフードを複数みつけ、日頃から与えてあげてください。
信頼できるメーカー
信頼できるメーカーは、「ペットフードの研究をしっかりしているメーカー」です。
ペットフードに求められることは、栄養素の過不足がなく、一定の嗜好性を備え、長期的に健康を維持できるフードなのです。
それを実現させるためには、大規模かつ長期的な研究が必要となります。
研究をしっかりとしているメーカーは独自の研究施設を持ち、ホームページに公開しています。
キャットフードを選ぶ時のポイントとして、メーカーのホームページもチェックしてみましょう。
高級キャットフードが健康にいいのか?
プレミアムフードと呼ばれる高級なキャットフードがあります。
プレミアムフードとは、原材料や製造工程を徹底管理して作られたキャットフードのことです。
具体的には、人工的な保存料や酸化防止剤などはほとんど使用せず、人間が食べられる程度の高品質な原材料を使って作られたフードとされています。
「プレミアムフード=健康にいい」は間違ってはいませんが「プレミアムフード=どんな猫にもいい」は違います。
例えば、プレミアムフードのなかにはタンパク質含有量が多いものもあり、そうした食事を腎機能低下している猫に与えることは、健康に良いとはいえません。
プレミアムフードは良い点も多くありますが、それよりもまずは猫に合った栄養バランスが必要であり、きちんと食べてくれる好みの味である必要があります。
健康で長生きするためのご飯やおやつの量

日本の猫は半数以上が太りすぎ~肥満であるといわれています。
肥満は健康被害をもたらす原因となりやすいため、健康で長生きするためには太らないようにする必要があります。
そのためには、ごはんとおやつの量に注意することが大事になります。
猫が必要なエネルギーを把握する
与えるご飯やおやつの量に注意するためには、先ず猫が必要なエネルギーを知る必要があります。
猫の必要な1日のエネルギー量を知る方法はいくつかありますが、PERとDERという2つの数値をもとにした方法が優れています。
PER 安静時エネルギー要求量
PERとは、健康な動物が常温環境で安静にしているときのエネルギー要求量のこと。
算出方法・・・70✕(体重kg)0.75
動物が必要とするエネルギー量は、体重ではなく体表面積に比例するため、体重を元に体表面積を求めた値になります。
電卓での計算方法
体重が4kgの場合
①体重を3乗する「4✕4✕4=64」
②√(ルート)を2回押す「2.828…」
③表示された数字に70をかける「2.828…✕70=197.9….」
体重4kgのPERは、約198kcal/日
猫の体重ごとPER早見表
体重 | PER(kcal/日) |
1kg | 70.0 |
2kg | 117.7 |
3kg | 159.6 |
4kg | 198.0 |
5kg | 234.1 |
6kg | 268.4 |
7kg | 301.2 |
8kg | 333.0 |
DER 1日あたりのエネルギー要求量
DERとは1日あたりのエネルギー要求量のことです。
算出方法・・・PER✕係数
係数はライフステージによって異なるため決まった係数をかけていきます。
生後4ヶ月未満 | PER✕3.0 |
生後4ヶ月~6ヶ月 | PER✕2.5 |
生後7ヶ月~12ヶ月 | PER✕2.0 |
成猫(去勢・避妊済み) | PER✕1.2 |
成猫(未去勢・未避妊) | PER✕1.4 |
高齢猫 | PER✕1.1 |
肥満傾向 | PER✕1.0 |
妊娠中 | PER✕2.0 |
授乳中(自由に食べさせる) | PER✕2.0~6.0 |
例えば、去勢済みの4kgの猫の場合は
198(4kgの猫のPER)✕1.2(去勢済み成猫の係数)=237.6
DER=237.6kcal/日となります。
適正量のご飯を与える
猫に必要なエネルギー量を把握したら、フードの給与量を算出していきます。
算出方法・・・DER(kcal/日)÷フードのカロリー(kcal/100g)✕100
例えば、去勢済みの4kgの成猫に、フードのパッケージに370kcal/100gと記載されているフードを与える場合は
237.6(4kg成猫去勢済みのDER)÷370(与えるフードのエネルギー)✕100=64.2…
1日の給与量が約64gとなります。
あとは普段与えている回数により1回量を決めていきましょう。
フードのパッケージに記載してある体重毎の給与量はあくまでも目安です。
猫が太らないためのおやつの選び方
多くの猫はおいしいおやつが大好きです。
適正なご飯の量を与えたとしても、おやつも食べているとカロリーオーバーになってしまいます。
そこで注意するポイントとしてはおやつは低カロリーのものにすることです。
具体的には、液状タイプやスープタイプのものにすることです。
液状タイプやスープタイプのものは、ほとんどが水分でありカロリーが少ないものが多いのです。
100gあたりのカロリーは50kcal前後です。
一方、カリカリタイプや素材ベースタイプのものは主食なみのカロリーを有しています。
100gあたりのカロリーは350kcal前後です。
低カロリーなおやつに切り替え肥満を予防していきましょう。
まとめ

猫に長生きしてもらうためのご飯は
「必要な栄養を算出し、総合栄養食をしっかり計量し必要量を過不足なく与える」
これに限ります。※もちろん治療が必要な場合などは獣医師の指示に従ってください。
猫にとっては、おいしいごはんやおやつが安全に食べられることは幸せなことかもしれません。
ただし、食べ過ぎて肥満になり健康被害に繋がる恐れもあり、その原因は飼い主さんにもあります。
与えるフード選びや日々の給与量の正しい理解を深め、少しの知識とちょっとした行動で愛猫の健康寿命を延ばすことに繋がります。
ぜひ、愛猫の健康を第一に考えご飯の準備をしてあげてください。
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